誰しも自分の特性や得意なことを活かした仕事に就きたいと考えるものではないでしょうか。
では「深く考えることが好き」という特性をもつ人は、どのような仕事に向いているのでしょう。
今回は深く考えるのが好きな男女500人を対象に「深く考えるのが好きな人に向いている仕事」についてアンケートを実施しました。
反対に「深く考えるのが好きな人に向いていない仕事」についても聞いています。
- 調査対象:深く考えるのが好きな人
- 調査期間:2025年8月21日~24日
- 調査機関:自社調査
- 調査方法:インターネットによる任意回答
- 有効回答数:500人(女性319人/男性181人)
- 回答者の年代:20代 23.8%/30代 29.2%/40代 28.2%/50代以上 18.8%
調査結果に対して、公認心理師の石上友梨氏よりご考察いただいております。

■監修者プロフィール
石上友梨氏
公認心理師/臨床心理士
大学・大学院で心理学を専攻し、心理職の公務員として臨床経験を積む中で、「心」だけでなく「身体」からのアプローチの大切さを実感しヨガや瞑想を学ぶ。現在は、心理相談室や教育機関にて、発達障害や愛着の課題を抱える方を中心に、認知行動療法やスキーマ療法によるカウンセリングを行いながら、マインドフルネスやヨガクラスの運営、ライターとしての執筆活動を行っている。
東京CBT-YOGA https://cbt-yoga.com/
深く考えるのが好きな人に向いてる仕事1位は「研究職」

深く考えるのが好きな500人に「深く考えるのが好きな人に向いてる仕事」を聞いたところ、1位は「研究職(36.4%)」で、突出して高くなりました。
2位「作家(15.2%)」、3位「ITエンジニア(12.8%)」が続きます。
「深く考えることが得意な人は、自分の思索や分析をじっくりと形にできる仕事に向いている」とわかります。
例えば研究職やITエンジニアは、論理的に考えて仮説を立て、仮説が正しいか実験やテストなどを通じて検証します。
作家やライターのように、自分の内面や社会について掘り下げて考え、言葉にする仕事もランクイン。
カウンセラーや教員など人と深く関わる仕事も、相手のことを考える力が必要です。
1位 研究職
- 研究職・開発職のどちらも経験しています。与えられたテーマに対してただこなすだけでなく、さらに一歩踏み込んだ考察が求められる仕事です(20代 女性)
- 自分の考えている仮説に対して検証を繰り返すなど、深く考えていくことが必要だからです(40代 男性)
1位は「研究職」でした。
研究職は、答えのない問いに挑む仕事です。
理由がわからない事象などに対し、仮説を立てて検証を重ねる過程は、深い思考が得意な人に向いています。
研究テーマやアプローチ方法には先行研究などのお手本もあるでしょうが、未知の問いに挑むにあたっては、与えられた手順をこなすだけではなく、自ら掘り下げて考える力が必要になります。
実際に研究職を経験し、思考力が役立ったと感じている人もいました。
2位 作家
- 小説家やマンガ家。文章や絵を書く・描くには、展開を掘り下げていく必要がある。ストーリーを続けていくのは、深く考える人に向いていそう(30代 女性)
- 世界観を定め、プロットを思い描き、テキストとしてアウトプットするので、深い思考が好きな人は向いていると思います(40代 男性)
- 人の内面や社会の矛盾などについて考えることが必要な職業だから(50代以上 女性)
2位は「作家」でした。
作家は物語を考えるなかで、人間の心理や社会的な矛盾の描き方について深く考察します。
登場人物の心情や行動をリアルに描くためには、人間の内面や関係性を掘り下げて考える力が欠かせません。
また、読者への伝え方を考える力も必要となります。
さらにファンタジー小説などであれば、新しい世界を創造するにあたり、論理的な破綻がないか検証する力も必要。
作者の思考が、作品の奥行きやリアリティにつながり、魅力となります。
3位 ITエンジニア
- 深く考えないと、バグが起きたり、納品時にミスがあったりするからです。また深く考える思考力がないと、クライアントの要望を形にできません(20代 女性)
- ロジックが破綻しないかどうか熟考するから。エラーが起こったときの原因究明で、熟考するから(30代 女性)
- システムなど複雑なので、いろんなパターンを考えるため(40代 男性)
3位は「ITエンジニア」でした。
ITエンジニアが働くシステム開発やプログラミングの現場では、仕様の理解から設計、実装、テストまで、論理的な筋道を立てながら考える力が求められます。
ITエンジニアにとって、論理的思考力は必須とも言えます。
例えば開発段階でのクライアントの要望は、必ずしも明確ではありません。
ぼんやりした要望を具体的なシステムに落とし込むためには、抽象的なものを形にする思考力や構築力が求められます。
また開発の現場だけではなく、保守の現場でエラーやトラブルが起きたときにも、エラーの原因を多方面から予想して対応する力が必要です。
4位 カウンセラー
- 深く考えて寄り添う必要があるから(20代 女性)
- 相手のことを深く考えられるから(30代 女性)
- 他人の思考や感情を理解してアドバイスをするためには、深い思考能力が必要だろうと思うからです(50代以上 男性)
「カウンセラー」が4位です。
カウンセラーとは、悩みや問題を抱える人の話を聞き、心の整理や問題解決をサポートする仕事です。
話を聞いて問題解決に至る過程で、相手の状況を判断し、理解する思考力が求められます。
相談者の言葉は抽象的だったり、真意が隠されていたりするため、言葉の裏にある気持ちや経験を想像して理解する力が欠かせないからです。
また深く考えられる人だからこそ、意見の押し付けではなく相手に合わせた提案が可能になると期待できます。
5位 ライター
- 執筆、校正・修正など、考えることが多いから(30代 女性)
- 「どう書けば人に見てもらえるか」「どういう言葉が人々の心に刺さるか」など、多角的に物事を考えられると思うから(30代 男性)
- クライアントの要望など、目には見えないニーズを探るから(40代 女性)
「ライター」が5位に入りました。
ライターは、事実や情報を整理しつつ、人の心に届く言葉を選んで記事などを作成する仕事です。
「どう伝えれば読み手が共感するか」「クライアントが本当に伝えたいメッセージは何か」といった見えにくい部分を考える力が求められます。
深く考えることが好きな人ならば、依頼の背景や意図を掘り下げて構成を工夫し、より伝わりやすい記事に整えられます。
6位 教員
- 毎日同じ業務(やり方は同じ)だが、内容が違うため(30代 女性)
- 異なる個性をもった生徒に勉強を教える必要があり、場面によっては親にも対応する必要があるため、単純な考え方だけでは務まらない(40代 男性)
- 「いかに生徒に理解してもらうか」と思索を繰り返しているので、向いています(50代以上 男性)
6位は「教員」となりました。
教員は、毎年同じ授業をしているようでいて、実際には生徒一人ひとりの理解度や性格に応じてアプローチを変える必要がある仕事です。
生徒一人ひとりの理解度や性格は異なるため、すべての生徒に同じ教え方や言葉が通用するとは限りません。
そのため一度確立した教え方に固執するのではなく、「どうすれば理解してもらえるか」「どの順序で説明すれば効果的か」と常に工夫しながら考える力が求められます。
生徒のほか保護者への対応も必要となることから、柔軟な考え方が求められるという意見もありました。
7位 アナリスト
- 表面的な情報だけでなく、背景や関連性を深く分析する能力が重要だからです。複雑な問題に対して多角的な視点から解決策を模索する過程で、深く考える習慣が大きな武器となります(20代 女性)
- 複雑な問題を分解し、本質を理解する能力が必須だから。膨大なデータから洞察を抽出する際に、仮説を立てて検証する深い分析力が活きる(40代 男性)
- 証券アナリスト。いろいろなデータをもとに研究する必要があるから(50代以上 女性)
7位は「アナリスト」です。
アナリストの仕事では、膨大なデータや複雑な情報を分析し、価値のある考察を導き出すことが求められます。
そのため表面的な数値や結果だけではなく、重要な指標を見抜いたり、数値の背景にある「社会情勢」「人の動きや心理」「原因」まで深く掘り下げたりする思考力が必要です。
深く考える力が直接的に業務内容や成果につながる職業であり、洞察力と論理的思考を活かせる職種と言えます。
深く考えるのが好きな人に向いていないのは「簡単な単純作業」

「深く考えるのが好きな人に向いていない仕事の特徴」の1位は「簡単な単純作業(26.0%)」でした。
2位「同じ作業の繰り返し(13.2%)」、3位「ライン作業(10.4%)」、4位「スピードを求められる(10.0%)」が続きます。
- データ入力などの単純作業が多い仕事。正確性よりもスピードが求められる仕事(20代 女性)
- 工場での箱詰めやシール貼りなど、イレギュラーのないルーティンワーク。テンプレートを使用した書類作成(20代 女性)
- 肉体的な単純作業のみ。仕事を効率化できることが少ない(30代 男性)
- その場ですぐに対応する必要がある接客業は、向いていないと思います(40代 女性)
- 「手順を変えてはいけない」「配置を変えてはいけない」など、縛られたら何もできません。なので、ルール・規則などでがんじがらめになっている、自由度がない仕事は向いてないです(40代 男性)
深く考えるのが好きな人は、「思考を巡らせる余地が少ない仕事」は向いていないと感じることがわかります。
例えば1位「単純作業」、3位「ライン作業」、6位「マニュアル通りの仕事」などは、工夫の余地が少なくなります。
考える必要がないので楽とも言えますが、深く考えることが好きな人にとっては、考える楽しみを奪われてしまう仕事です。
またスピードや臨機応変な対応・瞬発力が重視される仕事ですと、深く考えている時間がなく、思考力を活かせません。
つまり「深く考える力を発揮できない状況」あるいは「深く考える力が評価されにくい仕事内容」は、向いていないと考える人が多いと言えます。
まとめ
深く考えることを楽しめる人に向いている仕事としては、「研究者」「アナリスト」「小説家」などが挙がりました。
論理的な思考力を活かせる仕事や、人間心理に寄り添う仕事などが多くなっています。
職種に関わらず、じっくり考えられる環境にある仕事と答えた人もいました。
一方で思考を巡らせる余地のない「単純作業」「ルーティンワーク」「スピード重視の仕事」は、深く考えるのが好きな人にとっては避けたい仕事と考えられています。
深く考える力を発揮できるかどうかを仕事選びのポイントにしている人は、今回のアンケートを参考にしてみてはいかがでしょうか。
最後に当記事の監修者、公認心理師の石上友梨氏の総括コメントを紹介します。

仕事選びにおいては「仕事に何を求めるのか」を言語化することが何より大切です。
仕事内容を重視する場合は、自分の特性や性格、興味・関心に合ったものを選ぶことで、無理のない形で能力を発揮しやすくなります。
とくに「深く考えること」が強みの人は、考える余地の少ない環境よりも、試行錯誤や工夫が許される仕事のほうが心理的満足度が高まりやすいでしょう。
職種名にとらわれるのではなく、「どのような仕事内容や働き方なら自分は生き生きできるか」という視点で選ぶことが、長期的な安定と納得感のあるキャリアにつながります。
